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  2. 木を知り、木とともに過ごした3年間 ~最後の林業高校・最後の卒業生~
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林業の先輩として、
木を語る仲間として
生徒を見守る先生の姿

近

20年以上にわたって、生徒と向き合ってきた近藤隆先生。
天竜林業高校は、ご自身の母校でもあります。
生徒たちとの思い出、学校への思いを聞きました。

近藤さん
「長い間私は、この高校で生徒たちと過ごしてきました。
天竜地区は昔から山とともに暮らしてきた地域ですが、
最近は“入学して初めて木に触れる”子たちがほとんど。基礎からていねいに授業を重ねていきます。

たとえば製材。丸太を一定の厚みに裁断していく作業です。
でっかい機械が大きな音を立てて木を切っていくので最初はみんな怖がります。
だからこそ、何度も実習を重ねて自信をつけさせていく。
何十回も練習していくうちにどの子も上手にできるようになります。

機械

普通過程と違って実習が多いのがわが校の特徴です。
班ごとに作業することが多いので、団結力が自然とついていくのが分かります。
“チームで何かを成し遂げる”力は、おそらくかなり高いんじゃないかな。
今も昔も変わらない、天林生の特徴です。

私の実家は木工屋でした。幼いときから父親の姿を見て育ちました。
当時の風景や技術を思い出すことも多いですね。それらをいまの指導に生かしています。
特に役立っているのは、木工加工機器の扱い方。
木材を細かく加工していく機械は常に危険と隣り合わせです。

父が『機械に対してこの位置に立ちなさい』とか『この機械は○○に特に注意』など
長年の経験から具体的に説明してくれたことを、いま生徒たちにくまなく伝えています。

率直にね、自分の母校であり教師生活を送ってきた高校の名前がなくなるということは寂しいですね。
でも時代の流れですから仕方ないのかもしれません。
名前が変わっても、林業に携わる人材を育てるという学校のスタンスはずっと変わらないと思います。」

新たに開校する「天竜高校林業科」でも、生徒たちはいままでどおり、
森のすばらしさ、林業の奥深さを学んでいくことでしょう。

この春、製材所で働き始める3年生の戸塚くんは、
部活の顧問でもある近藤先生を「先生であり仲間であり大先輩!」と言います。

近&戸

戸塚さん
「授業で教わるときはもちろん先生と生徒という関係。
森林科学部で活動しているとき、先生は“一緒に木について考える仲間”。
そして、木のことについて語り始めるとプロだなぁってあこがれます。
ひとつのことにこだわっている人、極めている人ってカッコイイです。
生徒はみんな先生のこと、尊敬していると思いますよ。
材木屋で働くぼくにとって先生はこれからも大先輩。ずっと頼れる存在です。」

校内には、先生方と生徒たちの深いつながりが感じられるものがあちこちにありました。

チェーンソーアート 丸太 下駄箱

授業の合間に、生徒と先生が一緒に作ったチェーンソーアート、
卒業生が山仕事のついでに持ってきた丸太、
新高校に設置するために先生が手作りした下駄箱。

そのひとつひとつに、長い歴史を刻んできた天竜林業高校の足跡が感じられます。
林業高校という名前が消えても、その伝統は新しい高校に引き継がれていくことでしょう。

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